Last updated:96/09/25


クイズ!あたっちゃって25%(略称:あたちゃ)の開発エピソード


・第一章〜胎動

 時は1991年までさかのぼります。当時、私が所属していた"THE LINKS"というパソコン通信ネットのとあるBBSで、こんな話が持ち上がりました。
「みんなで『クイズ!当たって25%』に出演しないか?」
 しかし、この計画は失敗に終わります。というのも、当時のメンバーは18歳未満が多かったために規定を満たせなかったのです。私も、その一人でした。18歳になれば「当たって25%」だって「ウルトラクイズ」だって出場できるのに。私は番組が長く存続することを期待していました。しかし「当たって25%」はたったの半年で終了してしまいました(ほどなく「ウルトラクイズ」も終了)。みんな「当たって25%」が好きだったのです。みんなの思い、そして私の思いは不完全燃焼となりました。
 そんな時、別のBBSで「当たって25%」のようなクイズゲームを製作しようという動きが始まります。それが「あたちゃ」でした。そのBBS「ディスクメール(以下DM)事務局」は、メンバーの作品を集めたディスクを発行している場所でした。DM事務局は、我々のBBSの宣伝コーナーとして「あたちゃ」を作ることを提案したのです。そして、デモ版がDMの7号に掲載されます。…そっくりでした。すごいことになるぞ、とこの時誰もが思ったのです。

・第二章〜挫折、そして再起

 次の8号には「あたちゃ」の体験版が掲載され、開発は順調かに見えました。しかし、ここで「あたちゃ」の開発はストップしてしまいます。その理由の一つは、THE LINKSが活気を失ったことにあります。THE LINKSはMSXユーザーのためのネットでした。しかし、既にMSXはアスキーの経営危機などもあって日陰の存在となりつつあったのです。新たな会員が入ってこなくなり、新陳代謝のなくなったTHE LINKSはコミュニケーションのマンネリ状態に陥りました。DM事務局もその例外ではありませんでした。やむなく、DM事務局はこれまでの体制を一新し、THE LINKSを飛び出して広く活動をしていくことを決意するのです。これが新しいサークル「GIGAMIX」の誕生でした。
 GIGAMIXは「ふらっとまぁしゅを探せ!1−2−3」「マジカルラビリンス」という2本のゲームを開発し、それなりにMSX同人界で名をあげました。そして、第3作として「あたちゃ」の開発が本格的に再開されることとなり、その中心として、かつて「当たって25%」フリークであった私が収まることとなったのです。95年夏のことでした。そこまでには、およそ3年近いブランクがあったのです。

・第三章〜完成、そして…

 私の手によって「あたちゃ」は少しずつ開発が進んでいきました。かつての遺産を再利用したため、プログラム的にはそれほど大きな苦労はしていません。私はBASICしか組めない非力なプログラマですが、そこは仲間たちがフォローしてくれました。
 苦労したのは、4択クイズの問題を作ることでした。他のクイズゲームは問題を短時間のうちに次々と消化していきますが、「あたちゃ」では問題を一問一問じっくりと消化していきます。ですから、使用する問題はできるだけ完成度の高いものにしないと、それがゲーム全体の完成度と直結してしまうのです。ですから、ネタ選びには慎重に慎重を重ね、さまざまな資料に当たり、いわゆるクイズ本も読んで作成にあたりました。「解かせる」ことが大事ですから、難易度も極力抑えて、いわゆる「カルト問題」の排除に努めました。当初の予定では1,200問程度用意できれば…と思っていたのですが、結局ネタを厳選した結果900問弱に落ち着きました。でも、自分としてはどのクイズゲームよりも良質な問題が揃っていると自負しています。
 こうして、95年の秋にはほぼ完成という段階まで来ていたのですが、ここで大きな問題が持ち上がります。それは著作権をはじめとする各種版権の処理についてでした。かつての「あたちゃ」は販売を前提にはしていなかったのです。確かに、コミケなどで売られる同人誌などは版権など考えていないものが多いのが事実ですが、できるだけの処理はしておいたほうがいいという結論に達しました。音楽を換え、音声を換え…。大事な「紳助さんの顔」は、最初に「当たって25%」への参加を提案した電網遊者Wataruさんがモデルとなって新たに描き換えられました。こうして、実に5年あまりの時を経て、ついに一つのゲームが形となったのです。そして、「当たって25%」の流れを受け継いだ「オールスター感謝祭」が未だに放送され続けていることは、私にとってとてもうれしいことなのです。

・第4章〜新たなる戦い 

 96年1月に完成した「あたちゃ」は、まず兵庫・尼崎で開かれたイベント「MSXキャンバス」に出展。用意していた40本あまりを完売するという成果をあげました。しかし、その後の売り上げは大きなMSX系イベントがないこともあって通信販売に頼ることとなり、あまり伸びませんでした。それでも、パソコン通信ネットや「Gプレ」などによる宣伝を通じて少しずつ売り上げは伸びていきました。
 しかし、長い間隔は新たな問題を起こします。そう、時間の経過とともに事実は変化していくのです。クイズ問題も修正を余儀なくされました。私としては、できるだけ修正する箇所が少なくなるように、極力時事ネタの類いは減らして出題していたのですが、やはりクイズというものは時事ネタなくては面白くないというのも確かでしょう。中でも大きな変化は政治の世界にありました。政治はころころ変わるので大変です。また、思わぬ変化といえば、やはりSMAPから森且行さんが脱退したことでしょう。これについてはまったく予期できぬ、ほとんど事故に近いような変化でした。
 そして、もしかしたら出題自体が間違っているかもしれない…という不安は未だにつきまとっています。一応、出題したものについては資料を基にして調査しているのですが、その資料自体が間違っているということも往々にしてあるものです。クイズプレイヤーの間では正確な事実を確認することを「ウラをとる」という警察用語のような言葉で表現していますが、それだけクイズには正確さが大事だということです。ただし、「あたちゃ」は4択クイズの形式ですから、ある程度の間違いは勘弁してね、と言いたいところですが(苦笑)。
 8月、ついに東京で開かれた「MSXフェスタ」でも、「あたちゃ」は用意していた40本を完売しました。トータルの売り上げでは100本を突破しています。もはや狭くなってしまったMSXのいう世界で同人ソフトが3桁の売り上げを達成したということには大いに満足しています。そして、やがてはこの経験を生かして、他機種のフィールドに…という願望も少しはあるのですが、残念ながら自らの未熟なプログラミング技術では他機種への進出は難しいでしょう。それよりも、クイズ作成技術のほうが明らかに向上していると思います。
 というわけで、また別のクイズゲームでも作ってみようかと思っています。今度は4択クイズではなく「2択」になる予定です。そして、「あたちゃ」は1つの問題をじっくり解かせる形式でしたが、今度は問題の雨を降らせる物量作戦型のクイズゲームにしようと思ってます。一緒に問題作成に協力してくれる方がいれば…なんて思っているので、もしよければメールでお問い合わせ下さい。



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